「――なんだろう。音楽がなかったら、こわいなと思います。詩やメロディに囲まれていないと、自分がなくなってしまう気がするので」
SHIONは、川崎にある「洗足学園音楽大学」の学生で結成された6人組アイドル『MARUKADO』のメンバー。ギター・ピアノによるソロ演奏、グループへの楽曲提供など「音楽」を軸に独自の活躍を見せている。
アイドルの枠におさまらない魅力をもつSHIONに、音楽との向き合い方を尋ねた。すると、何かを愛し続けることにより、人生が彩られていく様子を語ってくれた。
「感覚派」の思考回路
「大学でジャズピアノの科目を受けたとき、先生から『あなたは音楽理論を学ばない方がいい』と言われました。仕組みを意識しすぎると、どうにも私らしさが失われてしまう可能性があるようで。私は幼少期に音楽を始めたときからずっと”感覚派”で、楽譜を読まずに耳でメロディを起こすタイプ。たしかに、音楽理論にはちょっと……いやかなり苦手意識がありました」

音楽への理解を高める「ソルフェージュ」の授業でも、周囲と比べてコード選びが個性的だったそう。
ただ、その独特な感性こそが自らの持ち味だと気付いてからは、より自分なりの音楽を届けることに注力していると話してくれた。
SHIONは『MARUKADO』が毎月開催しているアコースティックライブにて、ピアノとギターそれぞれを用いたソロ演奏をしている。実際に、どのような意識でパフォーマンスをしているのだろうか。
「みなさんに楽しんでもらえるよう、ヒットソングのカバーをたくさん披露するなかで『この曲といえば、このリフ!』という部分は絶対に外しません。でもそこに『SHIONが演奏すると、そんなコード選びになるんだね』と感想が飛ぶようなパーツは、曲中にかならず入れるようにしています。ただ全体的には、当日のテンションや空気にお任せです。私の手が思うとおりに、音がその場で紡がれていくイメージですね」

SHIONの活動で注目すべきは『MARUKADO』のメンバーでありながら、グループへ楽曲提供をしている点。
感覚派の彼女に、曲はどのような経緯で思いつくのかを尋ねた。
「先に詩を思いつくことが多かったのですが、最近はメロディとほぼ同時になってきました、まるで詩がしゃべるかのように、音が一緒に浮かんでくるような感覚です。”曲を書こう”と思い立ったら、大枠は1日で完成します。編曲にたっぷり時間をかけているあいだは、つい寝不足になってしまうのが悩みです」
入浴の時間など、リラックスするタイミングで言葉やリズムが降ってくることが多いとのこと。
常にスマートフォンで録音できるようにしており、ボイスメモには「鼻歌」や「歌詞のかけら」が大量に保存されているそう。
初めての作曲は幼稚園の年長さん
SHIONに、そもそも音楽で生きていくことを決めたルーツを聞くと、小さな頃にまで話がさかのぼった。
「音楽に初めて触れたのは、物心つく前から遊んでいたアシスト機能付きの電子キーボードです。光る鍵盤をひたすらに追う私の様子をみた両親が、2歳からピアノを学べる教室に入れてくれました」

続けて、初めて作曲をしたときのエピソードも話してくれた。
「幼稚園を卒園する時期に、クラスの先生に感謝の気持ちを伝えたい思いで作ったのが『Spring』という曲です。自分の音を誰かに届ける喜びを知ったきっかけの作品であり、いまも楽譜を大切に保管しています」
「Spring」は、ドレミをつないでいっただけの純粋なメロディで、歌詞も存在しない。多様なジャンルの曲をインプットしたいまでは、絶対に作れない曲だという。
「小学生になってからは、クラシックのピアノコンクールで賞を取るべく、ひたすらに鍵盤と向き合っていました。下校後は寝る時間まで練習、休日はピアノ経験者の母親による鬼レッスン。学校の授業中ですら、机に両手を広げながら押し当てて、オクターブを早く届ける訓練にいそしんでいました」
中学生になると、クラシックよりもポップスへの興味が強まっていた自分と向き合い始める。
そして高校は、オリジナルソングを積極的に作っていくような、レベルの高い軽音部があるところを選んだ。
「高校の頃は、襟足やサイドが肩まで伸びたウルフカットで、目が前髪で隠れているような見た目をしていました。ちなみに髪色は真っ黒です。服装は、下北沢のサブカルな感じを想像するとちょうど良いかもしれません。軽音部は部長を任されるほど本気でやっていて、校庭に垂れ幕が下がるほどの賞を取ったこともありました」

高校卒業後は「洗足学園音楽大学」に入り、音楽・音響デザインコースを選択。
入学から2カ月ほどで『MARUKADO』の募集を発見し、勢いのまま飛び込んだ。高校時代にステージを沸かしていた熱狂や快感が忘れられず、アイドルとして立つ景色を見てみたいと思った。
「アイドルもバンドも、何かを届けられる点では同じ。いまはすっかり『大学生活=MARUKADO』です。でも加入したばかりの頃は、まさかグループに曲を提供できるとは思っていませんでした。とくに作詞は、バンドをやっていたときもほぼ担当したことがなかったんです。自分の気持ちを歌に乗せるなんて、どうにも恥ずかしくて……」
後編では、SHIONが『MARUKADO』へ提供した曲の制作秘話を聞きながら、さらなる彼女の音楽人生を紐解いていく。
後編「私が消えてしまっても、音楽は残り続ける」MARUKADO・SHIONが曲作りをやめない理由
しおん(MARUKADO) @shion_marukado
MARUKADO @marukado_staff
【LIVEインフォメーション】
6/20(金)
MARUKADO 第12回
アコースティックLIVE「花菖蒲」
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川上 良樹
『ポエトリー・オン 』編集長 エンタメ・ビジネス領域にて多数のインタビュー記事を執筆。 舞台の表側だけでなく、裏側にもフォーカスした取材をおこなう。https://kawakamiyoshiki.edire.co/
