「小さな劇場では、あなたの知らないドラマが日々巻き起こっている。」
ライブシーンを中心に活動する「地下アイドル」。ステージに立つ華やかな職業であるものの、各事務所から毎日のように報じられているのは グループ脱退や解散の知らせだ。
そんな厳しい世界である「地下アイドル」の道をあえて選択する人たちは、一体どのような人生を歩んできたのか。夢を追うなかでの現実には、何が待っているのか。
夢咲あいりさんは、朗読劇を軸にした唯一無二のパフォーマンスが魅力の『異国のルミナリア』のメンバー。
結成1年半を記念するワンマンライブを控えるタイミングで、地下アイドルになるまでの経緯や、未来への思いをインタビューした。
異国のルミナリア連載【異国の交差点(クロスロード)】第3回
第1回:「人生を変えた60秒の朗読」鮎沢詩が涙目で見た地下アイドルの現実と夢
第2回:「イジメに打ち勝つお姫様」みるき♡ほの がピンクの髪で切り開いた自分だけのアイドル像
「サウンド・オブ・ミュージックの吹替を担当」芸能活動の始まり
夢咲さんをあらわす特色の一つに「芸歴=年齢」がある。幼少期には、どのような活動をしていたのかを尋ねた。
「大手の子役事務所に入ったのが、0歳のときからなんです!成長に合わせて、おもちゃのCMや再現VTRなど、さまざまな活動をしていました。いまも実家には、私の仕事歴がわかるDVDや本が大量に残っています。」
子役時代の仕事のなかで、印象に残っているものがあるかを聞く。
「小学5年生のときに『サウンド・オブ・ミュージック』の吹替版キャストをしたことがあります。音楽の授業でも取り上げられるほど、誰もが知る作品に携われたのは『人生のなかでも一番大きい出来事』かもしれません。担当した三女のブリギッタは、真面目だけどおてんばな部分があり、なんだか私とそっくりだったんですよね。サラサラのロングヘアーもおそろいだったので、オーディションに受かったときはすごく嬉しかったです」

小さな頃から、芸能の仕事で頭角をあらわしている様子の夢咲さん。その後の動向を追う。
「小学校卒業と同時に、所属していた事務所を退所しました。中学生になると、子役の需要が一気に減ってしまうことが理由の一つです。その後、芸能の仕事をもっと続けたいと思っていた私は『浅草花やしき』を拠点に活動する『花やしき少女歌劇団』に入団。小中高生たちと一緒に、劇場型のショーをおこなう日々をスタートさせました」
毎週のようにショーを披露する活動は、中学1年生から高校2年生になるまで続いた。中学2年生の頃に大阪へ一度引っ越したが、あまりの楽しさに新幹線や夜行バスで通っていたそう。
「アイドルになる原点の『ステージへ立つ楽しさ』に気付けたのは、この劇団に入ってからです。目の前にお客さんがいて、リアクションをしてくれて。テレビの仕事では味わえない、生々しい魅力がそこにはありました」
実際に夢咲さんは、中学生の頃にアイドルになることを夢見始めたという。当時は『AKB48』が世間を賑わせており、キラキラな衣装でステージを舞う姿に憧れの感情を抱いた。
『高校生になってからは『AKB48』のオーディションを複数回受けました。一度は面接までたどり着いたものの、以降は書類選考すら通らず……。ほどなくして大学生になったタイミングで、私は一度アイドルの夢を諦めました。当時はいまよりも、中高生でないとデビューできないイメージが強かったんですよね」

「もう二度とアイドルにはなれない」将来の姿を見失った彼女が出した結論は「それでも、アイドルをやってみたい」だった。
大学1年生の夏より、ステージ付きのメイド喫茶とドラッグストアが複合した店舗『AKIBAドラッグ&カフェ(通称:アキドラ)』のスタッフとして働き始めた。
実際には、どのような活動をしていたのだろうか。
「『アキドラ』では、アイドルの疑似体験のようなことができました。外部から多くのグループがライブをしにくるなかで、私たちカフェスタッフも一緒に出演ができたんです。地下アイドルの存在を知ったのも、実はここで働き始めてからでした。音楽番組などに出演するよりも、小さな舞台でも数多くライブをできることの方が、私にはよっぽど魅力的に見えました」
「アイドル一本で生きていく」根本にある異国への深い愛
アイドルになる道が豊富にあることを知った夢咲さんは『アキドラ』内のスタッフでチームを組み、実際にステージでパフォーマンスを披露していたという。
店舗は彼女が働き出してから2年弱で幕を下ろしたものの、以降もフリーのソロアイドルとして活動を続けていた。
「大学4年生になり、将来の夢を本格的に考えなくてはならない頃、私の人生を左右する出来事が起こります。『アキドラ』発のアイドルグループ『異国のファルマチスタ』のサウンドプロデューサーをしていたDr.Usuiさんから、別の事務所が予定する新たなオーディション情報を教えてもらいました」

「『異国のファルマチスタ』は、私が心から尊敬していたグループです!まさしく異国感にあふれ、ほかにはない曲調で展開されるパフォーマンスが魅力で、当時の私の心はすっかり奪われていました。もう本当に、愛しすぎていた記憶しかありません。店内でのステージが始まると、いつもファンと一緒にMIXや振りコピをしていた思い出があります。後から周囲に言われて気付いたのですが、解散ライブのときには、最前列に立ち心からの感謝を送っていたようでした」
そんなグループを手掛けていたDr.Usuiさんからの誘いに対し、どのような回答をしたのだろうか。
「敬愛するグループの一端を担った方からの誘いは、私を『アイドル一本で生きる』と思わせるほどの力がありました。徐々に受け始めていた保育士の採用試験をすべて辞退し、私は『狂い咲けセンターロード』のメンバーになりました」
『狂い咲けセンターロード』の楽曲は、異国の世界観とはまた違った雰囲気ではありつつも、その音楽性にたしかなシンパシーを感じていたそう。
すべての曲が「当たり曲」で、自信をもってステージに立っていたと力強く話してくれた。
「ただ、初めて受け取ったオリジナル衣装が『真っ黒のライダース』だったときの衝撃は、いまも忘れることができません。オーディションのコンセプトからして、王道のアイドルを目指していくと思っていたので……。ここだけの話、試着をするときには『もっと可愛い格好をしたかった』と、内心思っていました」
その後も色や形は変われど、夢咲さんのもとにはライダースの衣装が手渡され続けた。そのようななかでも「結果的にグループの世界観を形成でき、むしろ突き抜けた感じが自分には合っていた」と明るい表情を見せてくれた。
「『TOKYO IDOL FESTIVAL 2019』で一番大きなステージへ立つ権利を得られるほど、グループの勢いはすさまじいものでした。でも『私たちの活動はこれから!』とメンバーが結束を強めていくなかで、新型コロナウイルスが行く手を阻んでいきました」
エンターテインメントが止まり、途端に思い通りの活動ができなくなってしまったグループは、さまざまな事情により解散することに。
「グループはなくなっても、アイドルの楽しさに目覚めていた私には、ステージを降りる選択肢はありませんでした。ただ『あれ以上のメンバーにはもう出会えない』と確信に近いものを得ていたこともあり……。解散発表時には、ソロアイドルの活動を続けることを宣言しました」
「いまの私の姿をみてほしい」重なる夢咲あいりと異国の歴史
今後の活動について悩むなか、彼女がやはり扉を叩いたのは、Dr.Usuiのもとだった。いつまでも、彼の楽曲を歌っていたいと思った。
「当時、Dr.Usuiさんが新しく立ち上げようとしていたのが、いま私が所属している『異国のルミナリア』です。そう、私が好きだった『異国のファルマチスタ』、改名後の『異国のパルピタンテ』の歴史を紡ぐグループでした。オーディションを手伝っていく過程で、一緒に挑戦してみないかと相談をいただきました」

彼女を突き動かしたのは『異国の楽曲が好き』という気持ちだった。ソロアイドルは平行しつつも、またグループを組んでの活動が始まった。
実際にステージでパフォーマンスをしたときは、どのような気持ちになったのかを尋ねる。
「異国の曲を歌えていることに幸せを感じつつも、同時にプレッシャーが襲ってきました。大好きだったグループの名に、傷をつけるわけにはいきません。活動のなかでは『異国のルミナリア』のための楽曲が作られていきました。新たな異国ソングの誕生に喜びつつも、より気を引き締めなければならないという気持ちは常にありました。」
これまで「異国」というワードを口にするたび、目をウルウルとさせていた彼女。「いま」の話へとつながっていくなかで、ポロポロと大量の涙をこぼし始める。
「デビューライブは、300人の会場がいっぱいになるほどの大盛況でした。この勢いでなら、もっともっと早い段階で、さらに多くの人に異国ソングを届けられると思っていました。それでも、現実はなかなか厳しくて。私がこんなに自分たちの楽曲を愛しているのだから、共鳴してくれる人はまだまだいるはずなのに……。こんな私をいまも支えてくれるファンの方には、感謝の気持ちしかありません」
涙が一向に止まらない彼女は、続けてゆっくりと語る。
『どうにも上手くいかないことがたくさんあるなかで、いまのメンバーに出会えて良かったと心から思っています。たとえ理想と現実のギャップに苦しむことがあっても、あの2人がいたからステージへ立ち続けられました。私たち、すごくバランスが良いグループなんですよ。見た目も性格も全然違うのに、一緒にいるだけでなぜか心地よくて。そんな3人のパフォーマンスを、もっとたくさんの人に見てほしいと日々願っています』
メンバーの話をしているときは、涙混じりに笑顔も見せてくれた夢咲さん。
最後に、デビュー1年半を記念するワンマンレビュウ(ライブ)を目前に控えるなかで、どのような思いを抱いているかを聞いた。
「いま私たちは、多くの人に3月28日のワンマンレビュウへ訪れてもらうため、まさに”あがく”ような毎日を送っています。実際に足を運んでくれた人に『本人たちがあんなに"来てほしい!"と言っていた意味がわかった』と思ってもらえるように、最高のパフォーマンスをお届けするつもりです」
「私はこれまでの長い芸能人生で、何千、いや何万人でもおかしくないほど、多くの人たちと触れ合ってきました。『あの頃』の私を知っている人が、今回のワンマンレビュウをきっかけに『いま』の夢咲あいりの姿を観に来てくれたら、これ以上嬉しいことはありません。なによりも、私を形作ってくれた大切な人たちに『ありがとう』の言葉を送れたら、それだけで私は幸せです」

夢咲あいり(@yumesaki_airi)
3/28(金) 異国のルミナリアワンマンレビュウ公演「異国のepisode Ⅰ -REVISITED-」
【会場】渋谷スターラウンジ
【時間】OPEN18:00/START19:00
【チケット情報】http://tiget.net/events/375670
異国のルミナリア連載【異国の交差点(クロスロード)】
川上 良樹
『ポエトリー・オン 』編集長 エンタメ・ビジネス領域にて多数のインタビュー記事を執筆。 舞台の表側だけでなく、裏側にもフォーカスした取材をおこなう。https://kawakamiyoshiki.edire.co/
